成功する英語研修とは(前編)
グローバル人材育成を目的とし、英語研修を導入している企業は数多くあります。しかし、そうした研修のすべてが成功を収めているわけではありません。
研修には様々な要素が絡んできます。それぞれの要素を明確に確定していくことにより、成果の上がる研修が実現します。今回の記事ではそれらの要素を洗い出し、それらを効果的に組み込む研修についてお伝えします。
研修の目的はなんであるか
その研修が何のために行われるのか、ゴールはどこにあるかなど、目標を明確かつ具体的にしておくことが大切です。研修目的を研修対象者に正しく伝えることは、その研修の成果に大きく影響します。
よくある問題は、組織と社員の意向がずれていること。研修対象者に研修の目的をきちんと伝えることは大事なプロセスです。
研修内容をつめこみすぎない
先の研修目的にも関連しますが、1つの研修の中に多くの要素を詰め込みすぎると失敗します。とかくあれやこれやと欲張りたくなるものですが、研修目的や社員のレベルなどにあわせて着実に身につけられる研修内容を実施してくことが重要です。
研修対象者の選定について
選定方法には主に以下の3通りの方法があります。研修の目的や内容によって適切な選定方法を選びます。
1)指名式
2)手上げ式
3)指名式と手上げ式のミックス
指名式:具体的な研修目的が確定しているときに実施されます。海外赴任前研修などが典型的な例ですが、幹部候補生研修もこの分類に入ります。
手上げ式:今後の研修方向性やニーズを探りたいとき、社員サービスの一環として、などの目的で実施されます。研修目的や、対象者の資格(TOEIC〇〇点〜など)の指針があると希望者が手を上げやすいでしょう。
指名式と手上げ式のミックス:指名式で選んだ参加者の中に少数の自ら志願した参加者を加えるもので、隠れた有望人材発掘にも有効といわれています。
研修期間・頻度
ある程度長期的にまたは集中して研修を実施することが理想的であることは理解しつつ、通常業務と並行して研修を実施する場合、そのようなわけにはいかないことは多々あります。
英語研修を実施している機関では目的にあわせた様々なコースが用意されていますので、研修目的・対象者のニーズにあわせたものを実施するのが良いでしょう。
1)定期的な研修の期間・頻度
一般的なのは数カ月〜半年などの期間に、週1回実施するタイプです。
週1回×12週など、3ヵ月単位で実施される研修が多いです。グループレッスンであれば1回の授業はレベルや内容にあわせて60分〜120分程度になります。プライベートレッスンは60分程度が多いでしょう。
スキル別の研修であってもオールラウンドな英語スキルの向上を期待して実際される場合が多く、スキルの定着度が高く、応用の効く英語総合力を獲得できるのが特徴です。語学を身に着けるためには一定期間集中して学習することが効果的なため、週1回などの研修では実際の授業時間以外に課題が出ます。そうした課題をこなすことも研修の一環として研修参加者には理解してもらうことが重要です。
こうした研修を受ける社員は、一定の基準で選抜されることが一般的です。
2)単発・短期セミナー
あるスキルについてのコツを教えてもらったり、英語習得についての心得的な内容のものが単発・短期の研修に適しています。
回数は1回〜3回ぐらいまでで、1回のセミナーの長さは2時間程度が一般的ですが、最長8時間ぐらいまでの丸1日の研修もあります。
こうしたタイプの研修では、まずは理論を学び、その後実施をし、講師からのフィードバックで終わることが多いです。
研修を受けた社員はそこで学んだことをその後各自で発展させていくことになります。そのための取っ掛かりをつける研修です。
自己啓発やより多くの社員に参加を促したいときはこういった単発のセミナーだと研修を受けやすくなります。
英語レベルごとの適切な研修内容
語学の習得には段階があるため、初心者にいきなりプレゼンテーションやネゴシエーションの研修を受けさせても空回りをします。
初級のうちは基礎固めをし、その後順番にスキルを鍛え、最終的にはミーティングやプレゼンテーション、ネゴシエーションなどが自信を持ってできるようになるようなステップアップできる研修が有効です。
1)初級(〜TOEIC 600未満 /〜CEFR A2)
ミーティング、Eメールなど特定のスキルに特化した研修はまだこのレベルの方には難しすぎて身につきません。
このレベルでは英語の土台作りに専念することが重要です。
具体的には文法の整理と語彙拡充を目的に、英語の筋トレにあたる反復練習を中心とする研修をすることです。
「なんとなく聞けるかな」「なんとなくしゃべれるようになったかな」という風にしてしまうと、その後壁にあたって伸びが悪くなります。
このレベルの方は英語での質問などにも不自由があるため、日本語も使って研修をすすめられるよう、講師はバイリンガル日本人講師がお薦めです。
2)中級(TOEIC600・700点 /CEFR B1中心)
さらに土台の作りの強化は必要ですが、プレゼン、ミーティングなどビジネススキル別の研修を取り入れることが可能になってきます。
この段階で日本人講師と外国人講師が連携を組んで実施する研修を受けると、英語受信力・発信力をバランス良く伸ばすことができます。
3)上級(TOEIC 800以上 /CEFR B2以上)
研修参加者は一般的なビジネス領域においては、英語を使っての業務遂行が可能なレベルに達しています。
そこで上級レベルの研修は業務内容に応じたカスタマイズが必須となります。講師はビジネス全般を熟知した外国人講師が良いでしょう。
講師選定のポイント
どのような講師に教えてもらうかは、研修の成否を分ける最も大きな要素です。
講師選定のポイントとなる点をいくつか記載します。
1)学歴・資格について
TESOL・CELTA*などを保持し、外国人に対する英語教授法の知識がある。
*英語教授法(英語を母語としない方に向けて英語を教える方法)についての資格
2)経験について
少なくとも2年以上多岐にわたる内容およびレベルの研修をグループに対して指導している。
3)研修内容や研修生のレベルに対して
初級レベルの研修には自ら英語力獲得の行程を踏んできている日本人バイリンガル講師が良い。
中上級以上のビジネススキル向上に焦点をあてた研修には自信もビジネスの経験がある講師が良い。
ビジネス経験が強みの講師が担当して効果のあがる研修生のレベルは通常TOEIC 700/CEFR B1・B2以上です。
最も重要なことは、つねにきちんと授業の準備をし、1人1人の研修生をしっかり見てくれる講師が揃っている研修機関を選ぶことです。
「成功する英語研修とは(後編)」では、研修開始後のポイントをお伝えいたします。